第1章 携帯に無言の電話
彼の携帯に無言の電話
正式な調査の依頼を受け、私は彰男さんのアパートに向かいました。
部屋には、彰男さんの使っていた携帯電話が残されていました。
財布などの金品は残されていませんでした。
洋子さんから話を聞くと、過去にも彰男さんが家出をしたことがあることがわかりました。
家出人の中には、家出が癖になっている人もいます。
私が依頼を受けた中でも、一度家出をしたことのある人は、複数回やっているケースが多いような気がします。
洋子さんから彰男さんが行きそうな場所に心当たりがないかを聞きました。
家出人の多くは、過去に行ったことのある場所や思い出のある場所へ行くことが多いのです。
しかし、彰男さんの行きそうな場所の手掛かりはつかめませんでした。
とりあえず、彰男さんが部屋に置いて行った携帯電話を洋子さんに渡し、充電を切らせないようにアドバイスをしました。
今回のケースだけでなく、計画的にせよ突発的に家を出てしまったにせよ、家出をするには必ず大なり小なり理由はあります。
また、人間は精神的に弱っているときに、ふと「どこかに行ってしまいたい」とその場から逃げ出したい衝動にかられるものです。
彰男さんも、何かしらの理由で今の状況から逃げ出したいと思ったのでしょう。
残されたご家族からしてみれば、「もう少し待てば帰ってくるだろう」と思いたいのです。しかし、日数が経てば経つほど情報も少なくなり、友人や知人など調査に協力して下さる方の記憶も薄れてきてしまいます。
また、最近では事件に巻き込まれる可能性も非常に高いため、警察への届出を
いかに早く進められるかが重要です。



